研修で地域全体を視野に入れた医療活動が体感できます

町立津南病院では、平成22年より毎年、東京慈恵会医科大学付属病院および東京医療センターの初期研修医の先生方(合計19名)を受け入れています。

1ヶ月の研修では、外来診療・入院診療・在宅医療・を予防医療(保健健康増進活動)などを行い、地域全体を視野に入れた医療活動を体感できます。

また、NST、ICT、糖尿病透析予防チーム、認知症ケアチームなど、多職種協同でのチーム医療にも参加していただいています。

感想文、研修写真を添付しましたので、どうぞご覧下さい。

研修医の方にお寄せいただいた感想文をご紹介します

地域医療研修感想文 (研修期間 2019.9.1~2019.9.30)

東京慈恵会医科大学 研修医 高橋悠介

「地域医療研修を終えて」

2019年9月に1か月間地域医療研修として津南病院で働かせていただいた。事前に津南町に関して知っていることはほとんどなく、調べてみると人口1万人を割る小さな町で、町に唯一の病院が津南病院だということが分かった。元々地域医療に興味があり、疫学研究会という部活に所属していたこともあり、どのような1ヶ月になるか期待に胸を膨らませて研修に臨んだ。

いざ津南病院で働かせていただくと、普段勤務する大学病院とは全く異なる環境であることに気が付いた。津南病院では常勤医師は内科3人、整形外科1人の合計4人であり、外来では自分の専門以外の患者の様々な症状に対応しなければならない。また、先生方は患者の仕事や家族構成なども頭に入っており、何気ない会話からも患者との良好な関係が築けていることが感じられた。外来患者の年齢層は大学病院よりも大分高く、中には90歳代でも独歩で病院受診をしている方もおり、大変驚いた。また、入院患者の年齢層も高く、担当患者の平均年齢は90歳を超えており、どこまで精査をしてどこまで治療をするかということについても考えさせられた。指導医の林先生をはじめ、佐野先生や藤川先生や半戸先生は皆さん優しく、懇切丁寧にいろいろなご指導をしてくださり、様々なことを勉強させていただいた。

その他にも予防医学に取り組む地域の働きかけなども体験させていただいた。健骨体操はいわゆる「脳トレ」と筋力トレーニングを組み合わせたもので、大変ハードかつ頭の体操になる興味深いものだった。体操後の跡片付けでは、90歳近いようなおばあ様が片手でパイプ椅子を持ちながら階段をスムーズに下りている姿を見て、なんて若々しいのかと驚愕した。

他方、観光の面でも大変楽しい1か月間であった。1番印象に残っているのは、片貝花火だ。研修中石川医院の石川先生の外来見学をさせていただいたが、その日は偶然にも片貝花火の日であった。石川先生にお誘いいただき、花火大会の特等席まで連れて行っていただいた。初めて花火大会に参加したが、シューンと花火のうち上がる音、火薬のにおい、鮮やかに開く花火、全身に感じる衝撃波を間近で体験できる迫力満点の花火大会であり、一生忘れることのできない1日となった。また、津南巡りでは津南町の奥地まで車で連れて行っていただいた。実は津南病院院長の林先生は大学の疫学研究会の先輩でもあり、昔は秋山郷で疫学研究会が活動していた時代もあったと聞き、大変親近感を覚えた。当時の歴史を調べてみると、昭和40年から44年まで住民の生活調査、環境調査、健康診断、体力測定、寄生虫検査等が行われ、初年度は寄生虫感染率が100%であったが、部活OBの指導のもと駆除が行われ、4年後には感染率が0%まで改善したそうだ。東京から遠く離れた津南町との不思議な縁を感じながらの研修となった。

津南町の住民の皆さんは穏やかで慎み深い印象があり、病院スタッフの皆さんもとても優しく、津南病院は本当に仕事がしやすい環境であった。1か月間の研修生活は時間が経つのがとても速く、また一生忘れることのできない思い出となった。もし今後機会があれば、第2の故郷、津南町でまた働く日を楽しみにしている。

最後になりましたが、津南病院で研修させていただき、本当にありがとうございました。先生方、看護師さん方、病院スタッフの皆様、役場・保健所の方、恵福園の皆様、その他多くの方々のおかげで大変楽しく、有意義な1か月を過ごすことができました。この場を借りてお礼申し上げます。

地域医療研修感想文 (研修期間 2019.7.1~2019.7.31)

東京慈恵会医科大学 研修医 貴田浩之

「ここが日本の最先端」

津南の高齢化率は40%を超えており,都市部にも近い将来同様の現象が生じるという意味のその言葉を,初日に阪本院長から聞いたときには何となく理解できていたような気持ちでした.しかし研修を重ねるに連れ「津南をナメていた」と気が付かされました.

最初に津南の高齢者の方の元気さに驚かされました.私の実家のある周囲では75歳を超えて元気に歩いている人がいるとびっくりされます.しかし,ここ津南では80代でも歩いて診察室に入ってくる患者さんが大勢おり,水中運動教室や健骨体操では20代の私よりも機敏に動く90代の方もいらっしゃいました.先に挙げた行政を主体とした取り組みが功を奏しているのに加えて,多くの方が続けている農業が良い運動となっているように感じました.

一方で,当然ながら病院には「元気でない」方が入院しています.高ナトリウム血症や低栄養自体はtreatableであり,入院治療で一時的に改善することは出来ても,その背景にあるのは加齢による口渇感の低下や認知症の進行に伴う自発性の低下といったuntreatableな状態でした.そうした患者さんにどこまで輸液をするのか,はたまた胃瘻を作るかなど,考えても正解のない,難しい局面を多々経験しました.「悩み続けても答えはでない,決めなければならない」という先生の言葉が印象に残っています.

 

次に人手不足を実感しました.津南病院の常勤の内科医師は4人(一番若い先生で50代)で,定年が近い先生もおり,患者さんだけでなく医師も高齢化していました.医師不足は周辺の医療機関でも同様であり,つい最近医師不足のため入院施設が維持できず診療所になってしまった病院も多数ありました.また,不足しているのは医師だけではありませんでした.津南病院では看護師さんの人数が足らず,慢性期の病床が休止となっていました.津南にある介護施設では介護士の数が足らず海外から職員を受け入れたということも聞きました.他方で,人数が少ないからこそのメリットも感じました.狭いナースステーションの中ではお互いすぐ顔見知りになり,負担になるような深夜帯のオーダーも快く引き受けて下さりました.距離が近いのは医療者間だけでなく,患者さんと医療者間の距離も近く感じました.糖尿病のマネジメントでは「誰が食事を作るか」が大事になると感じましたが,外来の看護師の方はほぼ全員の患者さんの家族構成まで把握されており驚きました.

 

最後に中山間地特有の大変さを痛感しました.病院や介護施設のある大割野周辺は比較的開けていてコンビニやスーパーなどが狭い地域に集中していてもあり,私自身も車なしでの生活に不便は感じませんでした.しかし「津南巡り」で職員の方に案内して頂いた秋山郷は「秘境」という名にふさわしく,津南の広大さ(大田区+世田谷区+足立区くらいの面積があります)とそこに病院は1つしかない事実に驚愕しました.訪問診療でお邪魔した集落も「秘境」とまで行かなくとも,平地と急な坂が交互に連続する河岸段丘を越えていかねばなりませんでした.観光客の視点としては,河岸段丘からの眺めがよく,湧き出る温泉もありと最高なのですが,地域住民の方が通院するには車での移動が不可欠で, 大変そうでした.車を運転できない高齢者の方はバスで来院されてましたが,本数が少なく,バスの時間に合わせて次の外来予約を決めていたのが印象的でした.

また,周辺の地域にも病院が少なく,飯山から十日町間(約70km)の救急指定病院は津南病院だけでした.重症で転院が必要になったとしても大規模な病院までは車で1時間以上かかるため,転院させるかの判断が難しい症例もありました.訪問看護で訪れた難病の方は埼玉県まで3ヶ月に1回通院していました.普段私のいる病院は各科のスペシャリストがそろっており,重症も難病も診療できる体制があり,困ったことがあればすぐ相談することができます.このような環境は本当に恵まれているのだと痛感しました.一方で,難病の患者さんで満足な医療はできなくとも,津南病院でできる限り診て欲しいという患者さん・ご家族もいらっしゃいました.

さらに私が研修したのは夏でしたが,雪がこの地域の健康に与える影響も大きいと思いました.糖尿病の先生からは冬は雪かきをするためにHbA1cが改善すると聞きました.また積雪対策に階段を設けて2階を入り口としている住宅がありましたが,移動が困難となった患者さんにはとってはその階段が却って通院を阻む壁となっていました.その結果,訪問診療に移行したり, 介護施設への入所となった方が多数いらっしゃいました.

 

津南での1ヶ月はあっという間に過ぎました.つなんポークや地元でとれた野菜など美味しいものも多く,住民の方も皆優しく,充実した毎日を過ごすことができました.津南が高齢者医療の「最先端」とすると,津南病院はその「最前線」と感じ,地域包括ケア病床の開設を含め病院の体制が大きく変わる中で貴重な経験を多数させて頂きました.様々な苦難や矛盾を抱えながらもこの場所に病院が存在する意義を強く実感するとともに,津南病院を,ひいてはこの地域の健康を守り,「なんぎい」人を何とかしたいとする皆さんの熱い思いが伝わってきました.

優しく教えてくださった指導医の藤川先生を始めとした先生方や,温かく見守って下さった病棟・外来・訪問の看護師の方々,その他検査技師の方や事務の方々など病院内外を通じて今回の研修に携わって頂いた全ての方に厚く御礼を申し上げたいと思います.この度は誠にありがとうございました.

町立津南病院での地域研修 (研修期間 2018.11.1~2018.11.30)

東京慈恵会医科大学附属病院 研修医

 私は2018/11/1~11/30の1ヶ月間、新潟県中魚沼郡津南町にある町立津南病院にて地域研修をさせていただきました。

まず、「地域」という言葉を平たく言うと「田舎」になると思います。私は、中学・高校・大学と大都会の港区の学校に埼玉の外れから毎日往復3時間以上かけて通う中で、「田舎」から来ていると言っていました。津南に来て、最初に直面したのが車の必然性でした。埼玉では車を一切運転することなく、生活できていたので、「田舎」という言葉はふさわしくなかったのではないかと思いました。

外来見学では、患者さんの年齢層の高さと人数の多さを目の当たりにし、高齢化社会と医療過疎を実感しました。また、病院の役割の違いも感じました。大学病院では、手術のために送られてくる側でしたが、外科の常勤のいない津南病院では、真逆の立場でした。そんな中、最も印象的だったのは、手術や化学療法を望まず、津南病院でフォローしている患者さんの存在でした。中核病院へのアクセスの問題などもあり、先生方も手を焼いている様子でしたが、そういった患者さんも少なくなく、津南病院の役割は非常に大きいと感じました。津南の方々の地元への愛着の強さも随所で感じられました。大学や部活など、様々な組織に所属してきて、愛着をもった人が集まっている事は、魅力的な組織の条件だと考えます。

研修の中で、院内での実習の他に、保健所研修やデイサービスや水中運動など、地域福祉に参加する機会もいただきました。保健所研修では、国家試験で活字でのみ学んだ社会医学についてなど、現場を見せていただき、具体的なイメージをつかむことができました。デイサービスではチーム戦のボール遊びに参加させていただき、高齢者の方々と多くのコミュニケーションをとる機会となりました。水中運動教室では、健骨体操に始まり、温水プールでの運動まで参加させていただきました。私は金槌なので、水につかること自体久しぶりだったのですが、水中では全身の筋肉を使いながらも、転倒による骨折などのリスクも低く、効果的な運動方法だと思いました。また、水の抵抗をコントロールすることで、負荷を調節することができ、各自が無理をしすぎないよう指導しているとのことで、いいことずくめだと思いました。病院では治療を主に行いますが、こうした運動の機会は予防のためにも行われており、寝たきり0といった標語を掲げられており、医療の一端を担っていると感じました。

オフでの話になりますが、この1ヶ月で10か所以上の温泉を利用させていただきました。薬湯として有名な松之山温泉や名水の湧く龍ヶ窪温泉、秋山郷の秘湯・萌木の里など、どれも素晴らしい温泉でした。

津南では豪雪に備えて1階がガレージになっており居住スペースが2階になっているなどの工夫があります。地元の方々も決まって雪の話をされるのですが、幸い11月中は初雪を観測したのみで、積雪はありませんでした。毎年スキーには行っているので、今年度はグリーンピア津南に足を運ぶことも検討しています。

オーダリングシステムの導入や院内薬局の廃止など、過渡期といえる状況でお忙しい中、多くの時間を割いていただき本当に感謝しております。直接御指導いただきました佐野先生をはじめ津南病院の先生方、医療スタッフの方々、地域の方々に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。