研修で地域全体を視野に入れた医療活動が体感できます

町立津南病院では、平成22年より毎年、東京慈恵会医科大学付属病院および東京医療センターの初期研修医の先生方(合計30名)を受け入れています。

1ヶ月の研修では、外来診療・入院診療・在宅医療・を予防医療(保健健康増進活動)などを行い、地域全体を視野に入れた医療活動を体感できます。

また、NST、ICT、糖尿病透析予防チーム、認知症ケアチームなど、多職種協同でのチーム医療にも参加していただいています。

感想文、研修写真を添付しましたので、どうぞご覧下さい。

研修医の方にお寄せいただいた感想文をご紹介します

 

地域医療実習感想文 (研修期間 2022.11.21~2022.12.16)

東京慈恵会医科大学医学部医学科5年 小林 美香

 

町立津南病院にて2022年11月21日から12月16日の4週間実習をさせていただきました、東京慈恵会医科大学医学部医学科5年の小林美香と申します。
津南町での4週間の実習は上越新幹線で東京駅から越後湯沢駅に来ることから始まりました。駅から病院まで車に揺られること40分程度、峠道を行き、トンネルを抜け、津南町まで参りました。津南町に着き、まず感じたことは道の暗さです。渡された宿舎の鍵には懐中電灯がついており、生活の在り方が東京都は大きく異なる場所に来たという実感が沸きました。屋根が雪に備えて急角度になっていたり、玄関が二重扉になっていたりと雪国ならではの町の風景に心躍りました。
実習が始まり、まず驚いたことはご高齢の方の多さと元気さです。今までの人生において100歳を超える方にお会いしたことはほとんどありませんでした。しかし、お会いする患者さんの年齢をお聞きすると100歳を超えた方がさほど珍しくなく、しかもお身体がしっかりとされている方が多く、衝撃を受けました。農業をしているからではないかと伺い、日頃の運動の大切さを痛感しました。津南町では健骨体操、水中運動も行われており、そちらにも参加させていただきました。ご高齢の方もできるような運動ということで本当に簡単なものだろうと思っていましたが、予想以上に筋肉に負荷のかかる体操で驚きました。認知機能維持のために左右の手をバラバラに動かす運動などは集中しないとできなかったのですが、90歳の参加者の方が私以上にスムーズに手を動かしている姿を見て、感銘を受けました。体操のために人と集まり、話をする機会が設けられているということも認知機能低下の予防に繋がるため、参加者の方々が心身ともに若々しい理由が垣間見えました。また、定期的に参加をすることで、認知機能が低下していっているとしても、それを他人が把握できるなど様々な面での利点があり、素晴らしい取り組みであると実感しました。健骨体操に参加されている方の肩周りの筋肉を触らせていただきましたが、80歳前後の方であってもとてもしっかりとした筋肉がついており、体操で体を動かすことの有用性をとてもよく認識させていただきました。高齢になるに伴って疾患が生じる可能性が高まることは避けられませんが、病気にならないように体を動かすこのような取り組みはこれからますます重要となるのだろうと強く感じました。
津南病院では訪問診療の現場にも多くお世話になりました。以前から訪問診療に興味があったものの、これまではその機会になかなか恵まれなかったため、今回訪問診療に同行させていただく機会を多くいただき、大変感謝しております。実際にご自宅まで伺うことで、玄関の前が急勾配である、真横が崖になっている細い一本道を通らないと町に出られないといったインフラ面での問題であったり、認知症があり暖房がつけられていない、階段が急なために二階に上がることができないといった生活面での問題など、病院で診療しているだけではわからないであろう情報が多く、そのような情報を知ることでより患者さんの生活に沿った治療方針を提示できることを学びました。特に津南町では、車でかなりの距離を運転しないと病院にかかれない立地にあるお宅も多く、そのような家から病院まで行くハードルの高さとともに訪問診療の必要性の高さをよく認識することとなりました。

都市部での実習のみでは得られない経験を多くさせていただき、学びの多い実習となりました。様々な場所での経験を重ね、視野を広くできるようこれからも精進してまいりたいと思います。

お忙しい中、実習をさせてくださった林院長をはじめとする町立津南病院の皆様、その他各施設の皆様、および津南町民の皆様に深く御礼申し上げます。

 

訪問診療実習 小林研修医(右手前)

 

地域医療研修感想文 (研修期間 2022.10.1~2022.11.31)

東京慈恵会医科大学付属病院研修医 秋田 みゆき

町と人 健やかに、幸せに。

2022年10月から11月まで町立津南病院で地域研修させていただきました、研修医の秋田みゆきと申します。津南で過ごした2ヶ月間は2年間の研修生活でかけがえのない思い出となりました。関わってくださったすべての方々に感謝致します。本当にありがとうございました。

新潟県中魚沼郡津南町は町民の40%以上が65才以上である超高齢化社会で、私は町に唯一の入院病床を持つ病院である津南病院で研修を行いました。外来、病棟、救急対応といった基本的な病院業務から訪問診療、ケアマネージャー同行、健骨体操、水中運動など地域医療研修ならではの体験など多くの経験を積ませていただきました。今まで大学病院で高度先進医療を行い、患者さんを「治すこと」を目標としてきましたが、ここでは今の状態を「維持すること」が目標であることが多く、当初は違いに戸惑うことも多々ありました。病棟では半数以上が90歳以上であり、毎週行われる厳しい内容の病状説明、積極的な治療を望まず緩和治療のため入院され、病院で息を引き取られる患者さんなどいつもより生と死が間近に感じられる日々が続きました。そして一足訪問診療に出向くと、100歳の方を75歳の娘さんが介護している姿や食事摂取できない旦那さんに対して奥さんが食事形態を工夫されている姿、夜中に30分おきに体位変換の要求があり介護疲れを起こしている姿があり、私が1年半みてきた「治す」医療は氷山の一角であると感じました。

また私は津南町の高齢の方の多さにも驚くと同時に高齢で元気な方の多さにも驚きました。103歳でも外来に元気に通っている方、新型コロナウイルスの集団接種会場に歩いてこられる99歳の方、入院中治療のために食事を一時的に止めると「ご飯がないと生活に張り合いが出ないよ!」とおっしゃる101歳の方。この町にいると90歳台前半はまだまだこれから!という気持ちになるほど元気で活発な方が多く不思議に思っていました。その理由を林院長先生に伺ったところ「皆さん農業だったり畑仕事だったり生きがいを持って生活しているからかもね」と教えてくださいました。たしかに入院患者さんに回診を行っていると「早く帰って草むしりがしたい」「そろそろ野菜の植え替えの季節だから畑に戻らなきゃ」「河北菜って知っているかい?そろそろ収穫の時期だから退院したいな」などのお話がたくさん聞かれ、皆さん自然と密着し生きがいを持っていることを体感しました。ここで医学生時代、教科書で学んだ医学の父ヒポクラテスの言葉のひとつ「人は自然から遠ざかるほど病気に近づく」という一節を思い出しました。まさしく津南町民の皆さんは津南町の自然豊かな中で自然と共に生きていらっしゃるからこそ強く、たくましく、そして生きがいがあるからこそ長生きされるのだと実感しました。

また私はこの研修の中でチーム医療についても考え直す事になりました。チーム医療とは2009年から厚生労働省が提唱した概念で、医療に従事する多種多様な医療従事者が各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い患者さんの状況に的確に対応した医療を提供すること、と定義されています。つまり一人の患者さんに対し医師だけでなく看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、ソーシャルワーカー、ケアマネージャー、救急救命士、放射線技師、臨床検査技師など複数の医療専門職が関わり治療やケアを行うという考え方です。津南病院でも患者さんがよりよく過ごせるように、そして患者さんの生活の質の向上に少しでも手助け出来るように複数の医療従事者が互いに補い合い治療するチーム医療がなされていました。私も患者さんの細かな変化については看護師さんに、リハビリの進行度合について理学療法士さんに、食事の形態については管理栄養士さんに、投薬の仕方については薬剤師さんに、退院後の施設調整については地域連携室の皆さんやケアマネージャーさんに直接情報共有していただき、治療を行いました。

ここからが私がこの研修の中で新たに感じたことですが、入院中だけでなく病院を退院してからも医療は続く、ということです。今まで「治すこと」を目標としていたときには退院後の生活について目を向ける機会はそう多くはありませんでしたが、「維持すること」を目標とすると退院後の医療がとても重要となってきます。そして退院後の医療は患者さん自身、患者さんのご家族、施設に入所されている方は施設の方、在宅介護を行っている方は訪問看護師さん、ホームヘルパーさんなど病院で働く人以外の様々な方に任せられています。前述にあるように在宅での体位変換、食事形態の工夫も治療の一環ですし、内服や食事摂取、入浴、排泄介助も治療の一環と考えられます。この観点からみると、チーム医療のメンバーは病院にいる医療従事者だけでなく患者さんご本人、そして患者さんのご家族、そして介護者すべてを含めて「チーム」であるとこの研修を通じて痛感しました。

結びとなりますが、この病院のスローガンは「町と人 健やかに、幸せに。」
津南町は先祖代々津南町に住んでいる方が多く、皆さん顔見知りで、直接の血縁関係がなくても「お父さん、お母さん」と声をかけあっている場面はとても印象的でした。人と人が、そして人と町が一体となって強い結びつきを持っていて、まるで皆さん家族のように支え合っている姿は私がこの町が素敵だと思った一番の理由です。今後は少し遠くからになってしまいますがこの町と人が健やかに、幸せに過ごせますよう心からお祈りしております。2ヶ月間本当にありがとうございました。

 

津南病院でレントゲンカンファレンスの様子、秋田研修医(右手前)

 

 

 

地域医療研修感想文 (研修期間 2022.8.1~2022.9.31)

東京慈恵会医科大学付属病院臨床研修医 中村 吉宏

地域医療研修を終えて

この度、2022年8月9月の2か月間、新潟県の町立津南病院にて地域医療研修をさせていただきました。本院・分院での研修を経て、ちょうど研修医2年目の折り返し地点で地域医療をローテーションすることができ、非常に良いタイミングで研修することができたと思います。

津南町は新潟県魚沼地方の南西部に位置し、県境を接する長野県北東部の栄村と合わせても人口1万人程度の小さな町です。65歳以上の人口が40%を優に超え、超高齢社会の2倍以上もの高齢化率を有しています。そんな日本の最先端をいく人口割合を形成している社会の地域医療を支えているのが、まさに町立津南病院であり、日本の地域診療の最先端でありました。

そんな津南病院での研修内容は、病棟、外来、救急、訪問診療に加えて、ワクチン集団接種の予診や乳幼児健診といった地域医療活動、デイサービス、さらには健骨体操や水中運動教室といったローカルイベントへの参加までさせていただきました。これらの全てが私にとって新鮮で初めて尽くしの経験でありました。まず初めに、熱心に指導してくださった院長の林先生、副院長の佐野先生、病棟・外来の看護師さん、保健師さん、ケアマネさん、ローカルイベントで出会った地域住民の方々、そして全ての患者さんに、この場を借りて心より感謝申し上げます。

病棟では、紙カルテ、オーダリングシステム、入院患者さんの多くは85歳以上の超高齢者で急性期から慢性期・回復期まで様々であること、疾患も肺炎、心不全、尿路感染症といったcommon diseaseから、悪性腫瘍や膠原病、原因不明疾患まで非常に多岐に渡っており、全てが非常に貴重な経験となりました。大学病院では、常にレジデント以上の先生の傍について、すでに決められた治療方針の中で動くことがほとんどでしたが、津南病院では指導医の林先生が監督のもとで、研修医が自分の頭で考えて必要な検査を入れ、輸液や抗菌薬も自分で組み立てるというトレーニングをさせていただきました。手技においても、心エコー、CV挿入、胸腔穿刺といった処置をこの2か月でかなりの数を主体的にやらせてもらったと思います。主治医とまでは言えませんが、主治医になったつもりで診療できる体制がとても勉強になりました。

私が最も驚いたことは、大学病院とは違い、悪性腫瘍などが見つかっても積極的な治療を望まない患者さんが多いということでした。遠方の急性期病院へ転院して侵襲的な治療を受けることよりも、住み慣れた町の病院や特養、または、自宅で最期を迎えたいということを真剣に熱望される患者さんとその家族の姿を何度も拝見しました。退院先が明確な患者さんはまだ良いですが、身寄りがない、特養の申請が通らない、チューブが外せないから退院先の受け入れが難しい、などゴールの見えない患者さんともたくさん直面することとなりました。そのような環境の中で、医療は必ずしも治療結果にコミットするものではなく、患者さんの本当のニーズを見つけ出し、それに応えるものであるのだと実感しました。

また、高齢患者さん特有の認知症、難聴、全身衰弱といったセッティングに加え、地域特有の訛りが加わり、コミュニケーションを取ることが非常に難しく、診療をどのように進めたらよいのかかなり苦戦しました。医療がこんなにも難しいと感じたのは研修医生活で間違いなく初めてでありました。

一般外来および訪問診療は、それ自体が研修医生活で初めての経験でした。外来では、限られた時間の中で必要な問診・身体所見・検査を選択し、その結果を解釈・判断して、患者さんへ方針を提案するということがいかに難しいかを身を持って実感しました。そのおかげもあって、将来自分が外来を持つ学年となるまでに何が必要なのか、何が今の自分に足りていないのか、どのようなことを伸ばしていくべきなのかを知ることができ非常に貴重な経験となりました。訪問診療では、病棟・外来以上に患者さんの生活背景を考慮した診療が試されていました。患者さんの家というアウェイな環境の中での病状説明や看取り同意書の取得は非常にドラマチックであり、そこへ至るまでの信頼関係の築き方についても多くのことを学ばせていただきましたし、地域医療でしかできない経験となりました。

最後に、津南町で過ごした2か月間の経験は自分の中で一生の宝物となりました。慣れない土地で慣れない医療、心が折れそうになった時に励ましてくださった先生方、スタッフの皆様、本当にありがとうございました。今回の経験を今後の医療へ生かすことができるよう、より一層成長していきたいと心から思います。津南町で関わりのあった全ての方々に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

デイサービス体験で高齢者とのふれあい、中村研修医(右)

 

 

地域医療研修感想文 (研修期間 2022.6.1~2022.7.31)

東京慈恵会医科大学附属病院 研修医 木澤 隆介

まず地域医療研修先が津南病院に決まった時にしたことは、Google Mapで位置を見ることでした。周りを山で囲まれ、信濃川沿いにある小さな町のようだ。さてアクセスは、と乗り換え検索をしてみると、なんと3時間から5時間くらいかかるようで、(後に越後湯沢駅に迎えに来ていただけることがわかり大変安堵しました)ストリートビューを見ると、未だかつて経験したことのない田舎だと分かったのでした。正直、これは大変なところに決まってしまったな、と不安に思ったものでした。ただ、田舎生活の不安と同時に、今までの研修の成果を確かめるチャンスだと意気込んでもいました。地域病院では上級医が少ないから研修医が主体となって働くようだ、と先輩から聞いており、初期研修1年間を経て、どこまで内科的管理ができるのかやれるだけやってみよう、と考えていました。そうして迎えた津南町初日、いきなり綺麗な景色に心打たれました。越後湯沢駅から病院までの間は道の両側に田植えしたばかりの田んぼが広がり、ずっと遠くの山と広い空を見ました。官舎からも良い景色を見て、非日常を感じながらやる気は高まっていました。

しかし、いざ勤務を始めてみると、全く環境が異なることに気づかされました。入院患者さんの平均年齢は極めて高く、およそ90歳くらいです。回診をしても、難聴や認知症で声かけに反応してもらえなかったり、レスポンスが悪かったり、方言で何も聞き取れなかったりと、コミュニケーションが難しかったです。それは病歴や症状を聞くときだけでなく、身体所見をとるときも同様で、こんなにも情報を得ることが難しいのかと打ちひしがれました。他にも初めての紙カルテ、オーダリングシステム、限られた検査環境もあり、初日を終えた時点で当初の意気込みはどこかへ行ってしまっていました。津南病院では自分の力を試すというより、新たな学びばかりでした。

最初に気づいたのは、患者さんを診る上では内科の知識ももちろんですが、患者さんの訴えをいかに受け取るか、が大切だということでした。毎朝の回診ではなるべく患者さんの話を聞き取れるようにし、客観的にわかる身体所見をとるようにしました。2ヶ月経った頃には掠れた声や方言にもある程度は対応できるようになり、意思疎通のレベルは徐々に上がったように思います。検査についても、大学では網羅的にオーダーしてしまっていましたが、過不足ないように悩むのもとても勉強になりました。さらに、看護師さんに話を伺うと、自分だけでは知り得ない症状を知り、生活背景を知ることもできました。24時間患者さんと接する看護師さん達の観察力には敵わず、本当に多くのことを教えていただきました。

そして次に気づいたことは、入院したからには、病気を治すだけではなく、患者さんや家族の生活を踏まえた退院を目指さなくてはいけないということです。急性期の病態ならある程度は治すことができても、認知症、慢性心不全、フレイル、脳梗塞後遺症、進行した悪性腫瘍などは改善させることが困難です。そして津南病院にはそのような慢性疾患を持つ患者さんが非常に多かったです。患者本人のADL、家族のサポート力、利用できる介護サービスなど、日々看護師さん中心に情報収集してくださり、カンファレンスを通して退院の形を考えるのは大変勉強になりました。中には退院してすぐ再入院してしまった患者さんもいらっしゃり、退院後の問題点は何か、次の手は何か、考えさせられました。場合によっては看取りの方針になることもあり、積極的医療を続けるだけが正解ではないのだと感じました。悔しいような気持ちも少なからずありましたが、治療は患者さんの生命力のほんの手助け程度で、やはり地力がなければ厳しいのだということは強く印象に残りました。一方でそのような際には、やれるだけのことはした、と言えるよう日々勉強して、より良い医療を提供したい、と気持ちを新たにもしました。

津南町で取り組まれている地域包括ケア、予防医療も見学させていただきました。福祉施設で一度会った患者さんが入院することがあり、訪問診療、訪問看護では退院した患者さんに再会することもあり、町一体に対する医療に触れられたように感じました。訪問診療で伺う範囲はかなり広く、地域に対する津南病院の役割は大きいと実感しました。また、予防医療として行われている健骨体操では、90歳台の参加者の方も元気に体操をしていて驚きました。入院患者さんも含め、津南では年齢に比して皆さん本当に元気に感じました。かなり高齢でも農作業をしている方が多く、健康の秘訣なのでしょう。研修中にあった町長選では、入院している100歳超えの患者さんが投票したいと意欲を持っていらっしゃいました。

津南での2ヶ月はとても穏やかで過ごしやすかったです。ちょうど田植えが終わった頃から稲はどんどん育ち、山は新緑でどこを見ても常に観光しているような景色でした。蛍も初めて見ることができました。久しぶりの開催の津南祭りも活気溢れていました。祭り好きな地域とよく伺ったので、病院として民謡流しに参加できなかったのは残念でしたが、タイミングよく見ることができいい思い出になりました。今後も津南町が元気であり続けられるよう、祈っています。

この研修では本当に多くの方々に助けていただきました。懇切丁寧にご指導いただいた林先生をはじめとする先生方、看護師などコメディカルの方々、事務の方々には多方面で様々なことを教えていただきました。病院外の研修でも保健師の方々や地域の方々にとても親切にしていただきました。この2ヶ月間は他では得られない貴重な経験ばかりでした。これからも学んだことを活かし精進していきます。研修で出会った全ての方に心から感謝申し上げます。

木澤研修医(中央)、乳幼児健診にて

 

 

地域医療研修感想文 (研修期間 2021.7.1~2021.8.31)

東京慈恵会医科大学付属病院 研修医 寺内博文

「地域医療研修を終えて」

2021年7〜8月の2ヶ月間、地域医療研修をさせて頂きました。具体的には、主に病棟業務・外来・訪問診療について見学をし、肺炎や慢性心不全の増悪など様々なcommon diseaseを経験させて頂き、マネージメントを学ばせて頂きました。
病棟では、基本的な輸液・抗生剤の組み立てからCVなどの病棟処置に参加し、林先生を始め周りの先生達に助けて頂きながら様々な経験をしました。また、回診時には至らない点もたくさんある中で問診・診察をさせて頂き、時には様々な話をしてくださるなど、僕の方が患者さん方から元気を貰っていました。
外来では、診察をさせて頂く機会を頂き、患者さんは嫌な顔一つせず受け入れてくださりとても助かりました。外来での診察は普段の研修では中々行う機会が無く、実際にさせて頂く事で自分の足りない点に気づき、また林先生の外来を見学し新しい発見がたくさんありました。将来の自分が外来を持つ時に必ずいい経験だったと思える時間になりました。
往診は、初めての経験でわからない事だらけでした。患者さんの困っている事を短い時間でアセスメントしなければいけない事や変化に気付く事の難しさを感じました。また、訪問看護やソーシャルワーカー訪問にも付き添わせて頂き、様々な医療サービスの重要性を感じもっと勉強しなければいけないと感じました。
地域医療研修が始まる前は正直なところ不安な事が多くありました。津南町を訪れるのは人生で初めてで、どういう場所何だろうと漠然と思っていました。2ヶ月間で様々な場所で津南町の方々の優しさに触れ合う事が出来ました。水中運動や健骨体操にも参加させて頂いた際には津南町の方々のエネルギーに触れる事が出来ました。院内ではコ・メディカルの方々がとてもフレンドリーに話してくださり、またソーシャルワーカー・事務・清掃の方々が気さくに挨拶していただき不安はいつの間にか無くなっていました。関わってくださった皆さんにここで感謝を述べたいです。研修での津南めぐりで、縄文土器の発掘を見させて頂いたのは驚きました。
地域医療に関して自分の中では漠然とした印象や知識しかありませんでしたが、短い時間でしたが林先生の地域に貢献する姿を隣で見させて頂き、医師不足など実際の問題点を考える事が出来ました。林先生の昼夜を問わず地元の方々に尽くす姿を見て尊敬の念を持ち、学んだ事をこれからの医師人生で還元して行きたいと思っています。
最後になりますが、COVID-19が猛威を振るう難しい時期に地域医療研修を受け入れてくださった事に改めて感謝を述べたいと思います。本当にありがとうございました。

訪問診療林先生と
訪問診療、指導医林先生と寺内研修医(左)

 

 

地域医療研修感想文 (研修期間 2021.5.1~2021.6.30)

東京慈恵会医科大学 研修医 鎌田絵里奈

「地域研修を終えて」

2021年5月から6月にかけての2カ月間、町立津南病院で地域研修をさせていただいた。都内から電車で1時間半、バスを乗り継ぎ約1時間、高層ビルで顔を上げても太陽と雲しかみえなかった空は、徐々に山や川、田畑へ変わり。人や車、物音の騒音は、静寂へと変わり、夕暮れ時にはカエルの大合唱が始まる。これが、私が津南町へ来た時の最初の印象である。
初めの1ヶ月は慣れない土地での慣れない医療。外来業務から始まり新型コロナワクチンの問診、訪問診療に病棟患者の対応。津南町の時の流れとは相反し、一日がこんなにも短く、時間が足りないと感じたのは研修医生活が始まって初めてであった。
2ヶ月目になり、院長先生や上級医の先生、看護師さんをはじめとする医療スタッフ、いつもあたたかく接して下さる患者さんのおかげで少しずつ慣れ始め、充実した研修生活をおくることができた。今思うと、すべての研修が初めての連続だった。
まず、外来診療が私にとって初めての経験であった。患者さんが診療室に入ってこられて、自分の目の前に座る。それだけで緊張と不安で頭が真っ白になり、患者さんにまず何と声をかけて良いかすらわからなくなってしまったことを鮮明に覚えている。問診は何を聞けばよいのだろうか、検査は何を入れたら良いのだろうか。患者さんの訴えを聞きながら並行して考えることの難しさを痛感した。また、ただの風邪一つとっても何の薬を処方したら良いかわからず、自分がいかに勉強不足であったかを感じた。一から丁寧に教えて下さった院長先生、研修医のたどたどしい外来診療に嫌な顔一つせず快く応じて下さった患者さんには感謝の気持ちでいっぱいである。まだまだではあるが、2カ月間を通し徐々にスムーズな外来診療ができるようになったと感じる。
病棟業務に関しても、今まで大学病院の研修で経験してきたものとは違うものだった。今までの研修生活では必ず上級医がいて、検査も方針も全て上級医が決めてくれていた。今回は、自分なりの鑑別を考え、自分である程度の方針をたて、検査をし、最終的な判断を上級医に仰ぐ。自分が主治医というわけではなかったが、主治医になったような気持ちで、責任をもって患者さんに向き合えたように感じる。回診のたびに私の手を握り「ありがとう」と言って下さった患者さん、「先生頑張ってね」と励まして下さった患者さんの手のぬくもりは忘れられない。
肺炎、尿路感染症といったcommon diseaseから重症な患者さんまで幅広い診療と管理を経験させていただき、大変勉強になった2か月であった。
最後に、様々な経験をさせて下さり、私の未熟な面を成長させてくれた、津南病院の医療従事者含め、診察させていただいた患者さん、大自然の津南の町に多大なる感謝の意を表し、この経験を、今後の医療に役立てていきたいと心から思う。
2カ月間本当にありがとうございました。

指導医林先生と病院裏の田の前で撮影写真は鎌田研修医(左)と指導医林先生、病院裏の田の前で

 

 

 

 

 

 

 

地域医療研修感想文(研修期間 2020.11.1~2020.11.30)

東京慈恵会医科大学 研修医 山﨑吉人

2020年11月の1か月間、津南病院で研修をさせて頂いた。越後湯沢駅に初めて降り立った日、漠然とした不安を抱えながら車に揺られ、道の左右に設置された、ランタンのような街灯を呆然と眺めていたことを今でも覚えている。

津南町は人口1万人を割る小さな町だ。かつてスキー産業で栄えた街並みは、スキーの衰退とともに影を潜め、日中、街中ではシャッターを閉める店が散見される。各地に散らばる観光地は、街を中心として放射状に広がる配置をしており、観光地同士のアクセスが悪いと言わざるを得ない。また、他の地方都市と類を違わず高齢化が進んでおり、患者さんの多くは80歳以上の高齢者だ。

ここまで書くといわゆる地方の小さな町という印象を受けるが、津南町は一味違う。まず驚いたのが、お年寄りの元気さだ。農業で汗を流し、健康的な食文化の残るこの町は県内トップの平均寿命を誇る。病院では度々90歳も後半に差し掛かる患者さんが歩いてご退院される。受けもった、95歳の患者さんが「ダメかと思ったけど、この病院に来て先輩がいるからまだ頑張れると思った。」と、正面では100歳を超える患者さんが元気にご飯を召し上がっている。なるほど、頑張れる気持ちもわかる。また、津南町には景勝地が遍在する秋山郷、自分で温泉を掘ることの出来る切明温泉、日本三大薬湯の一つである松之山温泉、など他ではない観光スポットがある。町全体が観光客を楽しませようと、創意工夫しており、3年に一度開催される「大地の芸術祭」は必見だ。個人的には切明温泉で今まで経験したことがない体験が出来たため、紹介しようと思う。切明温泉は秋山郷の最も奥にある温泉である。中津川が掘って出来た河原には天然の温泉が湧き出ており、スコップを借りて自ら温泉を掘る体験ができる。先人たちが掘った大きな風呂釜もあり、緑色に光る温泉が湧き出ている。入湯は勿論無料だ。風呂釜に入り周囲を見渡すと、大自然の中に溶け込み、猿にでもなった気分である。

津南病院での研修内容も充実していた。病棟業務をこなしながら、水中運動や健骨体操など地域の住民の皆さまと関わり、地域の健康維持活動について学ぶことが出来た。研修を行う中で感じたことは医療従事者の団結力の強さだ。規則、制度を超えて立場に囚われず、患者さんをどうにかして元の生活に戻れるように医療従事者が日々討論している。病院の廊下は医師、看護師がせわしなく行き来し、常ににぎやかだ。また、看護師さんは皆、世話焼き上手だ。患者さんが困ったことがあれば、必ず誰かが相談に乗ってくれる。都会では見られない程、医療従事者と患者さんの距離が近い。勿論social distanceを保ったうえで。

津南町で過ごした1か月間は大変有意義であった。指導をしてくださった、林院長、上級医の皆さん、色々相談させて頂いたコメディカルの皆さん、その他関係者の皆さんに厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

 

地域医療研修感想文 (研修期間 2020.9.1~2020.9.30)

東京慈恵会医科大学 研修医 定兼伊吹

「医学は厳しく、医療は暖かく」

研修医となり早一年半が過ぎ、漠然と「地域は医師不足であり、多くを期待されるかもしれない」と緊張しながらも、自身の未熟さを再確認する良い機会と考え、私はここ津南町に来た。そしてこの地で、私の座右の銘である「医学は厳しく、医療は暖かく」という言葉を改めて見直す機会を得た。

津南町の人口は1万人を割り、遂には高齢者人口も5割を超えた。研修は町唯一の中核病院での日常診療を中心に、地域の取り組みにも多く触れた。慣れない紙の診療録や検査オーダーに苦戦しながらも、漸く初日の業務を終え、既にいくつかの疑問が浮かんだ。

「同姓の職員、患者が多いのは何故か」、「最年少が77歳とは」、「なんぎいとは何か」と。受持ち患者は優に20人を超えるが、7名が同姓であり、職員を合わせると同姓は10人に及んだ。年齢も77歳を最年少に、半数以上が90歳を超える長寿である。終いには口をそろえ「なんぎい」という始末。同姓の多くは家族や親類関係、同じ在郷の住民であり、互いを認知した関係である。「なんぎい」とは体の不調を訴える新潟の方言であるらしく「難儀」に由来し、心の不調には「せつね」と言うらしい。そんな様々な疑問や驚きから私の地域医療研修は始まった。

病院は絵に描いたような医師不足、研修医の私がまるで主治医かのように患者と接する機会が自ずと増えた。未熟な私にできることは何かと考えた時、「医療は暖かく」を思い出し、患者の声に耳を傾けることを心掛けた。難聴、認知症、意識障害、訛りが大きな障壁となり、意思疎通は難航したが、なんぎいことについては聞き漏らさないよう留意した。そんな中で戦争時代、空爆から身を隠した話などを聴き、改めて如何に長寿であるのか気付いたりした。そんな中、良好な転機を辿り、いざ退院という時点でまた大きな壁に直面した。「一体この人はどこに帰るのか」、「誰がこの人の面倒を看るのか。」施設入所中の方は安心だ、帰る場所があり面倒を看る人もいる。「1人暮らし」、「身寄りがいない」、「子供も80歳」など到底そのまま帰して良いはずがない。単に退院と言っても患者のADLを理解し、家族を理解しないと先に進まないのだ。患者は1人ではなく、家族の中、社会の中の1人である。なんぎいことばかりに耳を傾けたが、患者を理解するには疾患だけ、個人の事だけでなく、家族の中で、社会の中でどのような状況にあるのかの把握が必要なのだ。

「地域に求められる医療」を考えると、地域の特性はもちろん、患者周囲の環境を知ることが社会から求められる医療の答えの1つであり、目標である「医療は暖かく」につながるのだろう。「医療は暖かく」を実践していく上では常に「社会の中の患者」という観点を持ち続けるべきだと思い知った。どれだけ患者が「暖かく」感じたかは推測するしかないが、その点において私は全力をかけたつもりだ。一方で「医学は厳しく」について言えば、1つ1つの疾患・手技への学びはしたつもりだが、「つもり」で終わっていたとも否めない。

「医学は厳しく、医療は暖かく、しかし現実は厳しい」これが実際のところだ。

研修医という大樹の陰に守られた立場につい甘えてしまうこともあるが、1年後いや、半年後には責任をもって医療を行うのだから、「自立」し、その現実に立ち向かってゆく。

26歳となり、残りの医師人生は40年くらいあるだろうか、意外と短いと感じつつ、実際のところはまだまだ長いのだろうか。10年後、20年後そして40年後までニーズは変化するのだろう。思えばここが日本の未来であり、最先端であったのかもしれない。

地域医療研修感想文 (研修期間 2019.11.1~2019.11.30)

東京慈恵会医科大学 研修医 阿部桐士

「津南町に来て」
越後湯沢駅から津南病院に行くまでの道のりで思い知らされました。田園風景が広がり高層ビルとは無縁の環境。夕方に越後湯沢に来て送迎してもらいながら外の景色を見て周りが真っ暗なことに気づきました。お店の照明も街灯も無く人もいない。そう、田んぼは日中しか作業しないし、人が歩かないなら道に街灯もいらないし、お店も夜まで営業している必要がない。津南の皆さんは家に畑があって野菜は自給自足でき、その野菜を使うため家で料理をするから外食する必要もない。津南病院に来る患者さんの年齢層は平均して80歳程度。慈恵で研修していて90歳以上の患者さんをみることがほとんどなかったので100歳を超える患者さんが次々と外来に入ってくることに驚きを隠せないのと同時に、年齢より数十歳若く元気に見えました。田んぼでの農作業で身体を動かし、野菜をふんだんに使った健康的な料理を作って食べ、早寝早起きをする。津南で研修をしている中でこんなお話を聞いて納得しました。シンプルですが、この習慣こそが健康で長生きできる秘訣なんだと。

私が研修したのは11月で帰るまでギリギリ初雪は見れませんでしたが、雪がこの地域に与える影響も大きいなと思いました。この地域では12月ごろに初雪が見られ、それから積もりに積もった雪は2mほどに、多いところでは5m近く積雪すると聞きました。そのため積雪対策に自然落雪の屋根を取り入れたりとこの地域ならではだなと思いました。また1階を駐車場に、住居スペースを2,3階にしているため、入り口は階段を昇って2階としている住宅が多くありました。近くに歩いて行けるようなお店も無く電車も夜までやっておらずバスは1日4本のみで夕方前が最終便。移動は基本的に車を持っていて運転できないと何もできないことになります。なので移動が困難となった患者さんにとっては家から出るために階段を降りて寒さの中バス停に行き受診するということが通院を阻む壁となっていました。それでも訪問診療に移行したり、介護施設へ入所したりと様々なカタチがあるんだと改めて知らされました。また、外来の時に再診予約する際、『2か月後は雪で大変だから頑張って3か月後にしようか。』と話していたのも印象に残っています。

正直なところ津南病院の人手不足も感じました。津南病院の常勤の内科医師は3人で一番若い先生が50代、2,3年後に定年を迎える先生もいて、このままだと5年後には常勤の内科医師は1人になりそうとのことでした。医師不足は周辺の医療機関でも同様で、つい最近医師不足のため入院施設が維持できず診療所になってしまった病院も多数あったそうです。津南にある介護施設では介護士の数が足らず海外から職員を受け入れたということも聞きました。しかし、人数が少ないからこそ医療者間で話を重ねて連携を取ることで病院全体としてのチーム力のようなものも感じました。距離が近いのは医療者間だけでなく、患者さんと医療者間の距離も近く感じました。看護師の方は患者さんの家族構成までしっかり把握されており驚きとともに、これこそが地域に密着した医療なんだと感銘をうけました。また、ひっきりなしに聞こえる救急車のサイレンの音が、様々な苦難や矛盾を抱えながらもこの場所にこの病院が存在する意義を強く実感しました。

津南での1ヶ月はあっという間に過ぎました。私は日本酒と温泉が好きで、美味しい日本酒と自然豊かな景色を楽しめる露天風呂がある温泉、この地域の住民の方々も皆さん優しくて、充実した毎日を過ごすことができました。様々な場所に連れて行っていただき、都会の病院研修では経験をすることができないような地域の人に密着した医療を目にして体験できたことは、今後の医者人生に必ず役立つと思いました。
優しく教えてくださった指導医の佐野先生を始めとした先生方や、温かく見守って下さった病棟・外来・訪問の看護師の方々、その他検査技師の方や事務の方々など病院内外を通じて今回の研修に携わって頂いた全ての方に厚く御礼を申し上げたいと思います。この度は誠にありがとうございました。

地域医療研修感想文 (研修期間 2019.9.1~2019.9.30)

東京慈恵会医科大学 研修医 高橋悠介

「地域医療研修を終えて」

2019年9月に1か月間地域医療研修として津南病院で働かせていただいた。事前に津南町に関して知っていることはほとんどなく、調べてみると人口1万人を割る小さな町で、町に唯一の病院が津南病院だということが分かった。元々地域医療に興味があり、疫学研究会という部活に所属していたこともあり、どのような1ヶ月になるか期待に胸を膨らませて研修に臨んだ。

いざ津南病院で働かせていただくと、普段勤務する大学病院とは全く異なる環境であることに気が付いた。津南病院では常勤医師は内科3人、整形外科1人の合計4人であり、外来では自分の専門以外の患者の様々な症状に対応しなければならない。また、先生方は患者の仕事や家族構成なども頭に入っており、何気ない会話からも患者との良好な関係が築けていることが感じられた。外来患者の年齢層は大学病院よりも大分高く、中には90歳代でも独歩で病院受診をしている方もおり、大変驚いた。また、入院患者の年齢層も高く、担当患者の平均年齢は90歳を超えており、どこまで精査をしてどこまで治療をするかということについても考えさせられた。指導医の林先生をはじめ、佐野先生や藤川先生や半戸先生は皆さん優しく、懇切丁寧にいろいろなご指導をしてくださり、様々なことを勉強させていただいた。

その他にも予防医学に取り組む地域の働きかけなども体験させていただいた。健骨体操はいわゆる「脳トレ」と筋力トレーニングを組み合わせたもので、大変ハードかつ頭の体操になる興味深いものだった。体操後の跡片付けでは、90歳近いようなおばあ様が片手でパイプ椅子を持ちながら階段をスムーズに下りている姿を見て、なんて若々しいのかと驚愕した。

他方、観光の面でも大変楽しい1か月間であった。1番印象に残っているのは、片貝花火だ。研修中石川医院の石川先生の外来見学をさせていただいたが、その日は偶然にも片貝花火の日であった。石川先生にお誘いいただき、花火大会の特等席まで連れて行っていただいた。初めて花火大会に参加したが、シューンと花火のうち上がる音、火薬のにおい、鮮やかに開く花火、全身に感じる衝撃波を間近で体験できる迫力満点の花火大会であり、一生忘れることのできない1日となった。また、津南巡りでは津南町の奥地まで車で連れて行っていただいた。実は津南病院院長の林先生は大学の疫学研究会の先輩でもあり、昔は秋山郷で疫学研究会が活動していた時代もあったと聞き、大変親近感を覚えた。当時の歴史を調べてみると、昭和40年から44年まで住民の生活調査、環境調査、健康診断、体力測定、寄生虫検査等が行われ、初年度は寄生虫感染率が100%であったが、部活OBの指導のもと駆除が行われ、4年後には感染率が0%まで改善したそうだ。東京から遠く離れた津南町との不思議な縁を感じながらの研修となった。

津南町の住民の皆さんは穏やかで慎み深い印象があり、病院スタッフの皆さんもとても優しく、津南病院は本当に仕事がしやすい環境であった。1か月間の研修生活は時間が経つのがとても速く、また一生忘れることのできない思い出となった。もし今後機会があれば、第2の故郷、津南町でまた働く日を楽しみにしている。

最後になりましたが、津南病院で研修させていただき、本当にありがとうございました。先生方、看護師さん方、病院スタッフの皆様、役場・保健所の方、恵福園の皆様、その他多くの方々のおかげで大変楽しく、有意義な1か月を過ごすことができました。この場を借りてお礼申し上げます。

地域医療研修感想文 (研修期間 2019.7.1~2019.7.31)

東京慈恵会医科大学 研修医 貴田浩之

「ここが日本の最先端」

津南の高齢化率は40%を超えており,都市部にも近い将来同様の現象が生じるという意味のその言葉を,初日に阪本院長から聞いたときには何となく理解できていたような気持ちでした.しかし研修を重ねるに連れ「津南をナメていた」と気が付かされました.

最初に津南の高齢者の方の元気さに驚かされました.私の実家のある周囲では75歳を超えて元気に歩いている人がいるとびっくりされます.しかし,ここ津南では80代でも歩いて診察室に入ってくる患者さんが大勢おり,水中運動教室や健骨体操では20代の私よりも機敏に動く90代の方もいらっしゃいました.先に挙げた行政を主体とした取り組みが功を奏しているのに加えて,多くの方が続けている農業が良い運動となっているように感じました.

一方で,当然ながら病院には「元気でない」方が入院しています.高ナトリウム血症や低栄養自体はtreatableであり,入院治療で一時的に改善することは出来ても,その背景にあるのは加齢による口渇感の低下や認知症の進行に伴う自発性の低下といったuntreatableな状態でした.そうした患者さんにどこまで輸液をするのか,はたまた胃瘻を作るかなど,考えても正解のない,難しい局面を多々経験しました.「悩み続けても答えはでない,決めなければならない」という先生の言葉が印象に残っています.

 

次に人手不足を実感しました.津南病院の常勤の内科医師は4人(一番若い先生で50代)で,定年が近い先生もおり,患者さんだけでなく医師も高齢化していました.医師不足は周辺の医療機関でも同様であり,つい最近医師不足のため入院施設が維持できず診療所になってしまった病院も多数ありました.また,不足しているのは医師だけではありませんでした.津南病院では看護師さんの人数が足らず,慢性期の病床が休止となっていました.津南にある介護施設では介護士の数が足らず海外から職員を受け入れたということも聞きました.他方で,人数が少ないからこそのメリットも感じました.狭いナースステーションの中ではお互いすぐ顔見知りになり,負担になるような深夜帯のオーダーも快く引き受けて下さりました.距離が近いのは医療者間だけでなく,患者さんと医療者間の距離も近く感じました.糖尿病のマネジメントでは「誰が食事を作るか」が大事になると感じましたが,外来の看護師の方はほぼ全員の患者さんの家族構成まで把握されており驚きました.

 

最後に中山間地特有の大変さを痛感しました.病院や介護施設のある大割野周辺は比較的開けていてコンビニやスーパーなどが狭い地域に集中していてもあり,私自身も車なしでの生活に不便は感じませんでした.しかし「津南巡り」で職員の方に案内して頂いた秋山郷は「秘境」という名にふさわしく,津南の広大さ(大田区+世田谷区+足立区くらいの面積があります)とそこに病院は1つしかない事実に驚愕しました.訪問診療でお邪魔した集落も「秘境」とまで行かなくとも,平地と急な坂が交互に連続する河岸段丘を越えていかねばなりませんでした.観光客の視点としては,河岸段丘からの眺めがよく,湧き出る温泉もありと最高なのですが,地域住民の方が通院するには車での移動が不可欠で, 大変そうでした.車を運転できない高齢者の方はバスで来院されてましたが,本数が少なく,バスの時間に合わせて次の外来予約を決めていたのが印象的でした.

また,周辺の地域にも病院が少なく,飯山から十日町間(約70km)の救急指定病院は津南病院だけでした.重症で転院が必要になったとしても大規模な病院までは車で1時間以上かかるため,転院させるかの判断が難しい症例もありました.訪問看護で訪れた難病の方は埼玉県まで3ヶ月に1回通院していました.普段私のいる病院は各科のスペシャリストがそろっており,重症も難病も診療できる体制があり,困ったことがあればすぐ相談することができます.このような環境は本当に恵まれているのだと痛感しました.一方で,難病の患者さんで満足な医療はできなくとも,津南病院でできる限り診て欲しいという患者さん・ご家族もいらっしゃいました.

さらに私が研修したのは夏でしたが,雪がこの地域の健康に与える影響も大きいと思いました.糖尿病の先生からは冬は雪かきをするためにHbA1cが改善すると聞きました.また積雪対策に階段を設けて2階を入り口としている住宅がありましたが,移動が困難となった患者さんにはとってはその階段が却って通院を阻む壁となっていました.その結果,訪問診療に移行したり, 介護施設への入所となった方が多数いらっしゃいました.

 

津南での1ヶ月はあっという間に過ぎました.つなんポークや地元でとれた野菜など美味しいものも多く,住民の方も皆優しく,充実した毎日を過ごすことができました.津南が高齢者医療の「最先端」とすると,津南病院はその「最前線」と感じ,地域包括ケア病床の開設を含め病院の体制が大きく変わる中で貴重な経験を多数させて頂きました.様々な苦難や矛盾を抱えながらもこの場所に病院が存在する意義を強く実感するとともに,津南病院を,ひいてはこの地域の健康を守り,「なんぎい」人を何とかしたいとする皆さんの熱い思いが伝わってきました.

優しく教えてくださった指導医の藤川先生を始めとした先生方や,温かく見守って下さった病棟・外来・訪問の看護師の方々,その他検査技師の方や事務の方々など病院内外を通じて今回の研修に携わって頂いた全ての方に厚く御礼を申し上げたいと思います.この度は誠にありがとうございました.

町立津南病院での地域研修 (研修期間 2018.11.1~2018.11.30)

東京慈恵会医科大学附属病院 研修医

 私は2018/11/1~11/30の1ヶ月間、新潟県中魚沼郡津南町にある町立津南病院にて地域研修をさせていただきました。

まず、「地域」という言葉を平たく言うと「田舎」になると思います。私は、中学・高校・大学と大都会の港区の学校に埼玉の外れから毎日往復3時間以上かけて通う中で、「田舎」から来ていると言っていました。津南に来て、最初に直面したのが車の必然性でした。埼玉では車を一切運転することなく、生活できていたので、「田舎」という言葉はふさわしくなかったのではないかと思いました。

外来見学では、患者さんの年齢層の高さと人数の多さを目の当たりにし、高齢化社会と医療過疎を実感しました。また、病院の役割の違いも感じました。大学病院では、手術のために送られてくる側でしたが、外科の常勤のいない津南病院では、真逆の立場でした。そんな中、最も印象的だったのは、手術や化学療法を望まず、津南病院でフォローしている患者さんの存在でした。中核病院へのアクセスの問題などもあり、先生方も手を焼いている様子でしたが、そういった患者さんも少なくなく、津南病院の役割は非常に大きいと感じました。津南の方々の地元への愛着の強さも随所で感じられました。大学や部活など、様々な組織に所属してきて、愛着をもった人が集まっている事は、魅力的な組織の条件だと考えます。

研修の中で、院内での実習の他に、保健所研修やデイサービスや水中運動など、地域福祉に参加する機会もいただきました。保健所研修では、国家試験で活字でのみ学んだ社会医学についてなど、現場を見せていただき、具体的なイメージをつかむことができました。デイサービスではチーム戦のボール遊びに参加させていただき、高齢者の方々と多くのコミュニケーションをとる機会となりました。水中運動教室では、健骨体操に始まり、温水プールでの運動まで参加させていただきました。私は金槌なので、水につかること自体久しぶりだったのですが、水中では全身の筋肉を使いながらも、転倒による骨折などのリスクも低く、効果的な運動方法だと思いました。また、水の抵抗をコントロールすることで、負荷を調節することができ、各自が無理をしすぎないよう指導しているとのことで、いいことずくめだと思いました。病院では治療を主に行いますが、こうした運動の機会は予防のためにも行われており、寝たきり0といった標語を掲げられており、医療の一端を担っていると感じました。

オフでの話になりますが、この1ヶ月で10か所以上の温泉を利用させていただきました。薬湯として有名な松之山温泉や名水の湧く龍ヶ窪温泉、秋山郷の秘湯・萌木の里など、どれも素晴らしい温泉でした。

津南では豪雪に備えて1階がガレージになっており居住スペースが2階になっているなどの工夫があります。地元の方々も決まって雪の話をされるのですが、幸い11月中は初雪を観測したのみで、積雪はありませんでした。毎年スキーには行っているので、今年度はグリーンピア津南に足を運ぶことも検討しています。

オーダリングシステムの導入や院内薬局の廃止など、過渡期といえる状況でお忙しい中、多くの時間を割いていただき本当に感謝しております。直接御指導いただきました佐野先生をはじめ津南病院の先生方、医療スタッフの方々、地域の方々に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。